化学用語 用語集

π結合(pi bond)とは

π結合(pi bond)とは隣り合う二つの原子のp軌道やd軌道などの相互作用によって生じる結合です。π結合はp軌道やd軌道の二原子間共有によって形成される結合で、二重結合や三重結合の形成にかかわっています。基本的にはσ結合による共有結合があるときにπ結合が形成されます。 

π結合はσ結合に比べると軌道相互作用が弱いため、結合エネルギーは低いのが特徴です。そのため、σ結合を切断する求核置換反応などに比べると、π結合を切断する反応は侵攻しやすい性質があります。π結合のエネルギーの低さを利用して、ポリマー合成でよく用いられているのがラジカル重合です。ラジカル重合ではπ結合の切断を伴うラジカル付加反応によって重合をおこなっています。スチレンの共重合によるポリスチレンの合成は典型例です。 

π結合は不飽和結合と呼ばれることもあります。二重結合に比べると三重結合のπ結合はエネルギーが低いため、エチレンに比べてアセチレンはπ反応性が高いのが特徴です。ただ、三重結合が反応した後には二重結合が残るため、高分子重合では反応制御が難しいという問題があります。そのため、高分子合成では二重結合を反応点とする合成設計がおこなわれるのが一般的になっています。

このページに掲載されている企業・商品・材料等情報は、当協会が各企業の公式ホームページに掲載されている情報等を収集した上で、掲載を行っております。情報を精査し正しい情報掲載をしておりますが、当協会がそれを保証するものではありません(情報に誤りがあった場合は、お問合せフォームよりご連絡ください)。また、各種引用元のデータの変更、追加、削除などにより生じる情報の差異について、当協会は一切の責任を負わないものとします。当協会は、当サイトの掲載情報から直接的、または間接的に発生したと思われるいかなる損害についても責任を負わないものとします。  

-化学用語, 用語集
-, , ,

関連記事

lca cfp

配位子(ligand)とは

配位子(ligand)とは金属錯体の中心金属に対して配位結合している化合物です。金属イオンはさまざまな配位子による配位を受けて安定化されています。配位子はルイス酸性を持っていて空のp軌道やd軌道を持つ …

lca cfp

反応速度定数(reaction rate constant)とは

反応速度定数(reaction rate constant)とは化学反応が原系から生成系に向かう速度の指標です。温度や圧力が一定で、同じ溶媒での反応であれば反応速度は基質の濃度に依存して変化します。反 …

lca cfp

【射出成形】反り(そり)の不良原因と改善対策

射出成形の反り(warpage)不良とは、冷却プロセスのある要件を原因として、成形品の形状が不良変形してしまうことです。金型の反りにより、成形品が折り曲げられたり、曲がったり、ねじれたりするなどの不良 …

lca cfp

メラミン樹脂(MF樹脂/melamine resin)とは

メラミン樹脂(MF樹脂/melamine resin)とは硬度や強度が高い熱硬化性樹脂の一種です。1938年に工業生産が始められてから、メラミン樹脂は安価な熱硬化性樹脂として広まりました。成形性が高く …

lca cfp

電子環状反応(pericyclic reaction)とは

電子環状反応(pericyclic reaction)とは共役しているπ電子系における協奏的な環状化合物の形成反応です。広義では環状化合物が開環する反応も電子環状反応と呼びます。ペリ環状反応とも呼ばれ …