原料・素材・材料

ポリカーボネート(PC)の特徴や用途・加工・成形・種類・強度・透明性

ポリカーボネート(Polycarbonate/PC)とは

ポリカーボネート(PC)とは、透明な熱可塑性エンジニアリングプラスチックです。ポリカーボネートは様々な種類の色(透明・白・黒・他着色品)で市販されていますが、透明性はガラス並みに優れており特徴の1つです。ポリカーボネートは、多くの様々な製品を製造するために使用され、耐衝撃性(アクリルの40倍、普通ガラスの400倍、強化ガラス100倍)および透明性が製品要件で必要な場合に特に有効です(例えば、防弾ガラスなど)。 ポリカーボネートは眼鏡、メディカル機器、自動車・車両部品、温室ハウス、防護服、デジタルディスク(CD、DVD、Blu-ray)、および屋外照明器具のプラスチックレンズに使用されるケースが多いです。また、ポリカーボネートは非常に良好な耐熱性を有し、重大な材料劣化なしに難燃性材料と組み合わせることができます。なので、ポリカーボネートプラスチックは、耐衝撃性、透明性、耐候性、耐熱性に優れたエンジニアリングプラスチックと言えます。

次の図は、ABS樹脂ポリスチレン(PS)ナイロンなどの一般的に使用されている他のプラスチックとポリカーボネートの衝撃強度を比較した相対的な衝撃強度を示しています。

※出典画像:ptsllc.com

ポリカーボネートのもう一つの特徴は、強度がありながらも非常に柔軟な素材であることです。基本的には、アルミニウム金属シートと同様に、亀裂や破損をせずに形成することができます。たとえば、熱を加えればより簡単に形状を変形させることができますし、熱をかけなくとも小さな角度の曲げも可能です。この特性は、金属シートが使えない場合(例えば、透明性が要求される場合、もしくは、電気絶縁特性を有する非導電性材料が必要とされる場合)、ポリカーボネートが代替材として大変有効な素材となります。


ポリカーボネート(PC)の歴史

ポリカーボネート(Polycarbonate/PC)は、エンジニアリング樹脂としてこれまで使用されてきました。西ドイツのBayerという会社によって1958年にフィルムが販売され、1959年には成形材料が販売されました。日本では、1960年ぐらいから帝人化成が生産をスタートし、その後三菱エンジニアリングプラスチックスや住友ダウ、出光石油化学らもポリカーボネートの生産を開始し、その頃では29万トン/年程度を生産することになりました。
また、一部環境ホルモンの危険性が謳われたこともありましたが、食品衛生法に適合しているかぎり、ポリカーボネート製品の安全性は確保されており、安心してポリカーボネート製品をご使用頂けます。

ポリカーボネート(PC)の構造式


※ホスゲンとビスエノールAを組み合わせるホスゲン法
※画像出典:wikipedia

ポリカーボネート(PC)の製造方法

ホスゲンとビスエノールAを組み合わせるホスゲン法によりポリカーボネートを製造する方法と、ジフェニルカーボネートとビスエノールAを組み合わせエステル交換法によりポリカーボネートを製造する2の製造方法があります。

ポリカーボネート(PC)の特長

長所
  • 樹脂・プラスチックの中で最高レベルの耐衝撃性があります。
  • 高温・低温に強く(-100℃~140℃と広範囲)、電子レンジや冷凍庫、炎天下でも使用が可能です。
  • 透明性が高く、可視光線透過率は80~90%です。携帯電話の前面板等にも使用される程透過率が高いです。
  • 加工性が良い。
  • 難燃剤を添加することでV0グレードにすることが出来ます。(自消性)
  • 吸水性や成形収縮率が低く、寸法安定性が良い。
  • 耐候性が良く、車庫ガレージにも使用されます。
短所
  • 強アルカリ性、有機溶媒に弱く(エステル結合を持つためアルカリ性に弱い傾向にある)、コンクリートや有機塗料、接着剤等に接触すると劣化・白濁してしまいます。
  • エステル結合を持つため、高温高湿度環境下で加水分解が起こりやすい。
  • 応力亀裂を起こしやすい。
  • 表面硬度が高くないので、アクリルと比べると傷つきやすい。


使用環境温度の比較

連続耐熱温度

評価:★★★★★

ポリカーボネートの連続耐熱温度は、約120℃です。ポリ塩化ビニル・ABS樹脂・アクリル樹脂・ポリアセタールなどはポリカーボネートより連続耐熱温度で劣ります。ポリカーボネートと同じレベルの連続耐熱温度を求めると、PP(約107~150℃)や、ナイロン66(約82~150℃)があり、それ以上の耐熱温度となると変性PPO(約180℃)やPPS(約240℃)・PEEK(約240℃)・PTFE(約290℃)などの種類の樹脂プラスチックが必要となります。

熱変形温度

評価:★★★★★

ポリカーボネートの熱変形温度は、130~140℃程度です。その熱変形温度は、ナイロン66やポリアセタールなどよりも優れています。また、ポリカーボネート以上の熱変形温度を求める場合、変性PPOやPPS(ポリフェニレンサルファイド)種類などの樹脂プラスチックが必要となります。また、意外にも熱変形温度の場合、PTFE(四フッ化エチレン)は約90℃程度の耐熱変形温度しか持っておらず、連続耐熱温度の場合の290℃ではありません。


耐薬品性の比較 ※汎用プラ・エンプラとの比較

耐アルカリ性

評価:★★★★

ポリカーボネートプラスチックの耐薬品性は、強アルカリ性にめっぽう弱く、汎用プラスチック・エンプラの中でも一番に悪いです。ただ、弱アルカリ性にはそこそこの耐性がありますので、アルカリ性に懸念がある環境下では、耐薬品性試験を実地することをおすすめします。

耐酸性

評価:★★★★★

耐薬品性の中でも耐酸性の部類では、ポリカーボネートは弱酸性には◎、強酸性には△です。イメージとしては、耐酸性・耐アルカリ性に強いポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンには耐酸性において劣りますが、ナイロンやポリアセタールより耐酸性が強いです。

有機溶剤性

評価:★★★★★

ポリカーボネート(PC)に関して、有機溶剤性は悪く、接着剤やコンクリート、有機塗料などに触れると白化や劣化を起こします。有機溶剤性が悪いグループとして、アクリル(PMMA)やポリスチレン(PS)、シリコーン樹脂(SI)などがあります。


寸法安定性の特性比較

吸水率

評価:★★★★★

0.15%がポリカーボネート(PC)の吸水率です。軟質ポリ塩化ビニル(0.07~0.40%)や硬質ポリ塩化ビニル(0.15~0.75%)、ABS樹脂(0.1~0.8%)と同じ程度の吸水率です。吸水率が低い点で寸法安定性を求める場合には、ポリプロピレン(<0.01%)やポリスチレン(0.03~0.05%)などがあります。

熱膨張係数

評価:★★★★★

ポリカーボネートの熱膨張係数は6.6です。吸水率が低かったポリプロピレンは6~8.5であり、ポリスチレンは6~8なので、熱膨張係数においてポリカーボネートとあまり変わらない寸法安定性となっています。


機械的強度の特性比較

引張強さ・圧縮強さ・曲げ強さ

評価:★★★★★

【ポリ塩化ビニル・ABS樹脂 < ポリカーボネート・アクリル・ナイロン・ポリアセタール < PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)・PPS(ポリフェニレンサルファイド)】の位置付けであり、ポリカーボネートは樹脂プラスチックの中でも中間的な引張強さ・圧縮強さ・曲げ強さの特性があります。

衝撃強さ

評価:★★★★★

ポリカーボネート(PC)の衝撃強さについては、様々な種類のプラスチックの中でも最高レベルです。【ポリカーボネート・超高分子ポリエチレン > ABS樹脂・PEEK > その他樹脂プラスチック】の位置付け。


価格コストの比較

評価:★★★★★

ポリカーボネートの価格コストは、樹脂プラスチックの中でもやや高い方であり、ナイロン66やフェーノール樹脂等と同じような価格帯です。ポリカーボネートと比べ、ポリアセタールやABS、アクリル、ナイロン6などのプラスチックは安い材料となります。


ポリカーボネート(PC)の成形加工方法

押出し成形加工 / 射出インジェクション成形加工 など


ポリカーボネート(PC)の成形加工条件

項目 単位
射出成形温度 273~328
圧縮成形温度 249~271
成形収縮率 % 0.5~0.7


ポリカーボネート(PC)の基本物性表

物理的性質

項目 単位
比重 1.2
ロックウェル硬度(D785法) M70~R118
吸水率 % 0.15

機械的性質

項目 単位
引張り強さ(D638/651法) Kg/㎠ 560~670
伸び(D638法) % 60~100
引張弾性率(D638法) 10^4kg/㎠ 2.5
曲げ強さ(D790法) Kg/㎠ 950
圧縮強さ(D695法) Kg/㎠ 880
衝撃強さ アイゾット Kg・cm/cm 65~87

熱的性質

項目 単位
熱伝導度(C177法) 10^-4cal/sec・cm/℃・cm 4.6
熱膨張係数(D696法) 10^-5/℃ 6.6
連続耐熱温度 120
熱変形温度(18.5Kg/cm² D648法) 130~140
燃焼性 可燃性

電気的性質

項目 単位
体積抵抗(D257) Ω/cm 2.1X10^16以上
絶縁破壊強さ 短時間(D149法) kV/mm 15.7
誘電率 10^3~(D150法) 3.02

化学的性質

項目 単位
弱酸の影響(D543法)
強酸の影響(D543法)
弱アルカリの影響(D543法)
強アルカリの影響(D543法) ×
耐有機溶剤性(D543法) ×

※上記データは参考値です。


ポリカーボネート(PC)の用途例

  • 20%のガラスと黒着色ポリカーボネートでつくられるカメラボディ
  • 各種ハウジング等の機械系部品、家電製品、スマホ
  • サングラス、メガネ、ゴーグル
  • 農業用ハウス、高速鉄道線路の防音壁、ヘルメット、照明機器、車載ライト
  • 哺乳瓶、文房具、スーツケース
  • 航空機の窓、新幹線の窓


ポリカーボネート(PC)の用途画像

▽ポリカーボネート製ハウス



▽ポリカーボネート製航空機窓



▽ポリカーボネート製ゴーグル



▽ポリカーボネート製シート



▽ポリカーボネート製スマホカバー



▽ポリカーボネートを使用したリア・サイドウィンドウ



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