
樹脂材料の曲げ弾性率は、製品の剛性・たわみ量・触感・耐久性を左右する重要な機械特性です。特に使用温度範囲が広い用途では、温度による弾性率変化(温度依存性)を正しく理解することが、材料選定や設計信頼性確保の鍵となります。
本稿では、代表的な熱可塑性樹脂について、曲げ弾性率が温度によってどのように変化するかを示したデータをもとに、実務に役立つポイントを解説します。
曲げ弾性率とは
曲げ弾性率とは、材料が曲げ変形を受けた際の剛性(変形しにくさ)を表す指標です。値が高いほど硬く、低いほど柔軟な材料であることを示します。
樹脂材料では、温度上昇に伴い分子鎖の運動性が高まり、一般に曲げ弾性率は低下します。この挙動は、材料の結晶性・非晶性、ガラス転移点(Tg)、強化材の有無によって大きく異なります。
各種樹脂の曲げ弾性率と温度の関係
図に示されるように、樹脂ごとに曲げ弾性率の温度依存性には明確な差があります。
- ガラス繊維強化樹脂(GF強化AS、GF強化CPPSなど)
温度上昇に対しても高い曲げ弾性率を維持し、剛性低下が比較的緩やか - 非強化エンジニアリングプラスチック(AS、ABS、PCなど)
常温域では高い剛性を示すが、Tg付近から急激に弾性率が低下 - 汎用樹脂(PP、LDPE、HIPSなど)
低温域から比較的低い弾性率を示し、温度上昇に伴いさらに柔軟化
特にポリカーボネート(PC)や耐熱ABSは、高温域まで一定の剛性を維持しますが、80~120℃付近で急激な低下が見られ、これはガラス転移挙動と強く関連しています。
材料系別の特徴整理
曲げ弾性率の温度依存性は、材料系ごとに以下のような特徴があります。
- ガラス繊維強化樹脂
高剛性・低温度依存性。構造部材や寸法安定性が要求される用途に適する - 非晶性樹脂(AS、ABS、PCなど)
Tg以下では高剛性だが、Tg近傍で急激に剛性低下が発生 - 結晶性樹脂(PP、PE、ナイロンなど)
温度による変化は比較的連続的だが、全体的に剛性は低め
設計・材料選定時の実務的注意点
曲げ弾性率の温度依存性を考慮する際には、以下の点が重要です。
- 使用温度域での実効弾性率を必ず確認する
- 室温データのみで判断しない(高温・低温で性能が大きく変化)
- ガラス繊維強化の有無が剛性安定性に大きく影響
- 外観・意匠部品では、剛性低下による変形・たわみに注意
特にガラス代替用途や薄肉部品では、温度上昇による弾性率低下が、ビビリ・反り・異音などの不具合につながるケースも多く、慎重な評価が求められます。
おわりに
曲げ弾性率の温度依存性は、樹脂材料の実使用環境での信頼性を左右する極めて重要な特性です。カタログ値だけでなく、温度変化を前提とした材料理解が、設計品質の向上に直結します。
樹脂プラスチック材料環境協会では、今後も材料物性の基礎から実務応用までを体系的に解説し、設計・調達・開発現場に貢献する情報発信を行っていきます。