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はじめに
PPA(Polyphthalamide、芳香族ポリアミド)は、ナイロン樹脂の一種でありながら、
優れた耐熱性・耐薬品性・機械強度を併せ持つ高性能エンジニアリングプラスチックです。
特にガラス繊維強化品を中心に、金属代替材料として自動車、電子機器、産業部材などでの用途が拡大しています。
近年では、EV化や5G通信機器の軽量・高密度化が進む中、PPAへの注目度が一段と高まっています。
市場規模の推移(2022年~2025年予測)
- 2022年:約4.2億米ドル(グローバル)
- 2023年:約4.6億米ドル
- 2024年(推定):約5.0億米ドル
- 2025年予測:約5.5~5.8億米ドル(CAGR:7.5%)
世界的なEV需要の高まりに加え、電子部品の小型・高耐熱化ニーズによりPPA需要は拡大しています。
特に高耐熱・高剛性グレードの採用が進み、高価格帯でも競争力が維持されています。
市場価格の推移(グローバル平均)
- 2022年:約6,000~6,300 USD/トン
- 2023年:約6,400~6,600 USD/トン
- 2024年Q4:約6,200 USD/トン(若干軟化傾向)
- 2025年予測:約6,100~6,500 USD/トン
主原料であるフタル酸系モノマーやガラス繊維の価格変動の影響を受けやすく、
中国における生産能力の変動もグローバル価格に影響を与えています。
主要用途別の需要動向
自動車(EV・エンジンルーム)
エンジン周辺部品、ウォーターポンプハウジング、バルブボディなどでPPAの採用が拡大。
特にEV化に伴う軽量化・耐熱性要求の高まりにより、金属代替としての需要が急増中。
電気・電子部品
スマートフォンの部品、モーター絶縁部材、ミリ波アンテナ周辺部材など。
高周波特性と寸法安定性が評価され、5G関連用途での需要が成長しています。
産業機器・航空宇宙
高温・高荷重下でも使用可能な特性から、精密機械部品、航空機内装部品などにも採用。
EU規制への対応やリサイクルグレードの開発も進展。
地域別市場分析
- アジア太平洋:世界の約48%。特に中国・韓国・日本の自動車メーカー向け需要が堅調。
- 北米:Tier1サプライヤー経由での採用が多く、米国のEVインフラ需要も後押し。
- 欧州:排ガス規制強化により、金属代替材料としての採用が進む。
主要メーカーとシェア(推定)
- エボニック(Evonik):約25%。ガラス繊維強化PPAで高評価。Vestamid HT Plusシリーズが主力。
- デュポン(DuPont):約20%。Crastinなどのナイロン系製品群を展開。
- ソルベイ(Solvay):約18%。高耐熱グレードAmodelが中心。
- バスフ(BASF):約15%。Ultramid Advanced Nシリーズ。
- 日本企業(東レ、住友化学、三井化学など):計10~12%。一部はOEM供給。
各社とも、用途特化型グレードの拡充やバイオベース化の開発に力を入れており、
グローバルシェア争いが続いています。
技術開発とイノベーション
• 低吸水率・高周波対応グレードの開発(車載レーダー・通信部材向け)
• バイオベースPPA(植物由来モノマー使用)の実用化に向けた試作
• 3Dプリンティング対応PPAペレット(粉体・フィラメント)での展開も視野
特に欧州では、EUのカーボンニュートラル政策の流れを受け、
グリーングレード(再生材/植物由来)の採用率向上が求められています。
今後の展望と課題
展望:EV、5G通信、航空宇宙、産業ロボット分野での金属代替需要の増加が主導。
高付加価値用途への対応力が今後の成長を左右するカギとなります。
課題:高価格帯であることから、PA66やPA6からの代替におけるコストバランスの調整が重要。
また、再生材対応グレードの安定供給と規格適合も急務です。