GHGとはGreenhouse Gasを略した環境用語で、温室効果ガスのことを指します。温室効果ガス (GHG) は、大気中に熱や長波放射を閉じ込める化合物ガスです。大気中の温室効果ガス (GHG) は、地球の表面を温かく覆います。太陽光や短波放射は、これらのガスや大気を容易に通過し、この放射線は地表に吸収され、熱または長波放射線として放出されます。 GHG の分子構造により、放出された熱を吸収したり、大気中に閉じ込められることで地球に再放出が可能になっています。この熱トラップ現象は、温室効果として知られています。産業革命以降の温室効果ガスの蓄積は、この温室効果を加速させ、地球温暖化や気候変動の問題を引き起こしています。
熱を閉じ込めるガスとしても知られるGHGは、二酸化炭素(CO₂)、メタン(CH₄)、一酸化二窒素(亜酸化窒素、N₂O)、フロン類などです。なお、温室効果の大きさは気体によって異なり、例えばメタンは二酸化炭素の25倍、一酸化二窒素は298倍の温室効果があります。ちなみに二酸化炭素は GHG の 64.3% を構成しています。化石燃料、固形廃棄物、樹木や木材製品の燃焼、および特定の化学反応を通じて大気中に放出され、生物の炭素循環の一部として、植物によって自然に大気から取り除かれます。メタンは、石炭、天然ガス、石油の生産と輸送、畜産と農業の慣行、都市固形廃棄物埋め立て地での有機廃棄物の腐敗によって大気中に放出されます。亜酸化窒素 (N2O) は、農業や産業活動、化石燃料や固形廃棄物の燃焼中に排出されます。フロンは、工業プロセスからの合成ガスです。ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄、および三フッ化窒素が含まれます。それらは、地球温暖化係数 (GWP)で二酸化炭素よりも 1,000 倍も強力であり、何千年もの間大気中に存在する可能性があるため、オゾン層破壊物質として知られています。
GHG は、forcing GHGs と feedback GHGs という 2 つの異なるタイプに分類することもできます。forcing GHGs は、二酸化炭素 (CO2)、メタン (CH4)、亜酸化窒素 (N2O)、およびフロン類の 4 つの上記のガスです。それらは大気を離れるのに何年もかかり、温度や気圧の変化に反応しないため、簡単には除去できません。対して feedback GHGs は水蒸気です。それらは大気中に数日しか存在せず、気候システムの非常に活発な構成要素になっています。つまり、条件の変化に迅速に対応します。
日本においては、地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に基づき、平成18年4月1日から、温室効果ガスを相当程度多く排出する者(特定排出者)に、自らの温室効果ガスの排出量を算定し、国に報告することが義務付けられています。
温室効果ガスがどのような排出源からどの程度排出されているのかを把握するためのデータのことを主に温室効果ガスインベントリと言われています。
温室効果ガスインベントリとは? ー インベントリとは、一定期間内に特定の物質がどの排出源・吸収源からどの程度排出・吸収されたかを示す一覧表のことです。気候変動・地球温暖化の文脈では、一国が1年間に排出・吸収する温室効果ガスの量を取りまとめたデータのことを、一般的に「温室効果ガスインベントリ(Greenhouse Gas Inventory)」と呼んでいます。温室効果ガスインベントリは、世界全体や各国における温室効果ガス排出量を把握するために作成されています。
環境省 温室効果ガス排出・吸収量等の算定と報告より
対象ガス ー 附属書I国が提出すべき温室効果ガスインベントリでは、二酸化炭素(CO₂)、メタン(CH₄)、一酸化二窒素(N₂O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六ふっ化硫黄(SF₆)、三ふっ化窒素(NF₃)の7種の温室効果ガスの排出量を算定するとともに、CO₂と比較した場合の各温室効果ガスの温室効果の強さを示す地球温暖化係数(Global Warming Potential: GWP)を用いてCO₂等量に換算した温室効果ガス総排出量を算定することが求められています。
環境省 温室効果ガス排出・吸収量等の算定と報告より