原料・素材・材料

ポリプロピレン(PP)の特徴や加工・成形・劣化・耐候性・融点・強度

ポリプロピレン(Polypropylene/PP)とは

ポリプロピレン(Polypropylene/PP)は、汎用プラスチックの中でも私生活で多く使われている樹脂の一つです。そのポリプロピレン自体には種類があり、ポリプロピレンだけを単独重合させた「ホモポリマー」、エチレンを少々混ぜ共重合させた「ランダムポリマー」、そしてその「ランダムポリマー」にゴム成分が均一に混ぜ込まれた「ブロックコポリマー」があります。またそれぞれには特徴があり、

「ホモポリマー」は剛性が高く光沢性があり、食品包装フィルムや食品トレー、梱包用延伸テープに使用されています。
「ランダムポリマー」は透明性が高く柔軟で、透明ボトルやたばこの箱のオーバーラッピングなどに使用されます。
「ブロックコポリマー」はゴム成分が入った分、耐衝撃性が高くなり、コンテナや自動車部品、家庭用雑貨、家電製品、冷凍食品用トレーなどに使用されます。

各製品は各ポリプロピレンの種類特徴を考慮して原料選択が行われています。
このようになぜポリプロピレン(Polypropylene/PP)は多くの用途で使用されていますが、それの理由は優れた機械的特性・耐薬品性・耐熱性・加工性などの特性があるからです。

ポリプロピレンの特徴でもある加工方法は様々あり、インジェクション成形・押出し成形以外にも真空成形・圧空成形・ブロー成形などの加工が可能です。主にインジェクション成形では食品容器やゴミ箱などの加工品を製造でき、押出し成形ではフィルムを製造できます。

また押出し成形のポリプロピレンフィルムの製造方法には3種類があり、オリエンテッドポリプロピレン(OPP/延伸ポリプロピレン)・キャストポリプロピレン(CPP/無延伸ポリプロピレン・Tダイ成形)・インフレーションポリプロピレン(IPP/無延伸ポリプロピレン・サーキュラーダイ成形)の方法で成膜が可能です。

このように、ポリプロピレンには素材自体の優れた特性がありながら、加工方法も多く存在し、様々な用途・シチュエーションの生活用品を製造できる樹脂・プラスチックです。

2016年の日本プラスチック工業連盟集計値によると、日本のプラスチック総生産量の内約22.9%がポリプロピレンです(2016年の日本のプラスチック総生産量:1,075万トン、内ポリプロピレンは247万トン)。これは、日本のプラスチック全体の生産ランキング第2位となります。ちなみに、第1はポリエチレンの23.9%、第3位は塩化ビニルの15.4%、第4位はポリスチレンの7%、第5位はポリエチレンテレフタレートの3.9%、第6位はABSの3.3%、第7位はポリカーボネートの2.7%、第8位はその他熱可塑性樹脂の10.1%、第9位は熱硬化性樹脂の8.3%、第10位はその他樹脂で2.4%となります。

ポリプロピレンは環境的にも優れています。たとえば、生産加工時の二酸化炭素排出量はアルミや鉄に比べ半分以下の数値です。また、ポリプロピレンはリサイクル可能なプラスチックであり、たとえ燃やしたとしても元々ポリプロピレンの分子は炭素と水素から出来ており、完全燃焼させば、水と二酸化炭素しか出ません。また、ポリプロピレンは薄膜化した製品でも丈夫なため、ドリンクカップなどに使用され輸送時の費用コストダウンと共に輸送排出ガスの低減にも役立っています。

※ポリプロピレン原料ペレット(PP Pellet)の製品物性表と製造販売メーカーをご覧になりたい方はこちらよりご覧ください。

▷ ポリプロピレン原料ペレット(PP Pellet)の製品物性表と製造販売メーカー 一覧


ポリプロピレン(PP)の歴史

ポリプロピレン(Polypropylene/PP)とはイタリアのNattaがチーグラー・ナッタ触媒を用いて、1954年に立体規則性のポリマーが生まれることを発見しました。このポリプロピレン(Polypropylene/PP)の工業化はイタリアのMonte-Catini社により、1957年にスタートしました。日本では、1962年に工業化をスタートさせました。


ポリプロピレン(PP)の構造式


※画像出典:wikipedia

ポリプロピレン(PP)の製造方法

原料のポリプロピレンを溶剤の中でチーグラー・ナッタ触媒と触れさせ、常温~80℃、3~10kgf/㎠で重合すると立体規則性のポリプロピレン(アイソタクチックポリプロピレン)が生産できます。


ポリプロピレン(PP)の特長

長所
  • 耐熱性、耐薬品性、機械的強度、絶縁性、断熱性に優れる
  • プラスチックの中でも比重が最も小さい
  • 表面光沢があり外観性が良く、硬度もある
  • ヒンジ特性、加工性、化学的・電気的特性が良い
短所
  • 耐候性に弱く、日光に長時間あたると白化する
  • 耐薬品性が強いせいで、接着性が悪い
  • 可燃性


    ポリプロピレン(PP)の成形加工方法

    押出し成形、インジェクション成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形 など


    ポリプロピレン(PP)の成形加工条件

    項目
    成型温度 180~280℃


    ポリプロピレン(PP)の基本物性表

    物理的性質

    項目 単位
    比重 0.90〜0.91
    ロックウェル硬度 R85〜R110
    吸水率 % 0.03
    融点 160

    機械的性質

    項目 単位
    引張り強さ Mpa 29〜38
    曲げ強さ Mpa 41〜55
    曲げ弾性率 Mpa 980〜1560
    圧縮強さ Mpa 37〜55
    衝撃強さ アイゾット J/m 29〜78

    熱的性質

    項目 単位
    荷重たわみ温度 58〜68
    線膨脹係数 ×10^-5/℃ 10〜12
    熱伝導率 W/m・K 0.12
    連続耐熱温度 107〜150
    燃焼性 可燃性

    電気的性質

    項目 単位
    絶縁破壊電圧 kV/mm 15〜26
    体積固有抵抗 Ω/cm 10^15以上
    誘電率 60Hz
    1,000Hz
    1,000,000Hz 2.2〜2.6

    ※上記データは参考値です。
    ※試験方法はASTMD882を参考にしております。


    ポリプロピレン(PP)の用途例

    • 車載関係では、自動車用バンパーや内装材、速度メーター、車内ディスプレイ など
    • 食品関係では、食品用ラップフィルムやお弁当箱やコーヒーの蓋、ボトルキャップ、飲料容器、ポテトチップス袋の1部層やコンビニ食品容器、洗剤容器 など
    • 家電関係では、洗濯機や冷蔵庫、テレビ、スマホ、パソコン など
    • 医療関係では、注射器や輸血バッグ、医薬包装 など
    • その他バケツやお風呂用具、包装フィルム、産業用フィルム、住宅設備、コンテナ、発砲製品、紐、ロープ、カーペットの原料繊維 など


    ポリプロピレン(PP)の用途画像

    ▽ポリプロピレン製椅子


    ▽ポリプロピレン製透明ケース


    ▽ポリプロピレン製透明実験容器

    画像出典:wikipedia

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