
はじめに
PC/ABS(ポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)は、耐衝撃性、寸法安定性、
熱変形性、成形加工性に優れた高性能エンプラです。PCとABSの物性を融合させたこの合金樹脂は、
自動車内装、家電筐体、IT機器、電気部品など幅広い分野で採用が進んでいます。
市場規模の推移(2022年~2025年)
- 2022年:約47億米ドル
- 2023年:約50億米ドル
- 2024年:約53億米ドル(推定)
- 2025年予測:約57億米ドル(CAGR 6.0%)
EV(電気自動車)や次世代通信機器における筐体軽量化需要の増加が市場成長の主要因となっています。
価格推移(アジア市場を中心に)
- 2024年初頭:約2,600 USD/トン
- 2024年末:約2,520 USD/トン(−3.1%)
- 2025年Q2見通し:約2,580 USD/トン(+2.4%反発)
原料であるポリカーボネート(PC)およびABSの需給バランスや、中国・東南アジアでの生産調整が価格変動要因です。
主要用途別の需要動向
- 自動車分野:EV向け部品(インパネ、ピラー、センターコンソール)での採用が拡大。
- 家電製品:白物家電や美容家電の筐体用途で需要安定。
- OA・IT機器:プリンター・ノートPC・タブレット筐体での軽量化と耐久性ニーズが強い。
地域別の市場トレンド
- アジア太平洋:世界市場の約60%を占め、中国・韓国・インドが成長を牽引。
- 北米・欧州:高機能エンプラ需要と共にEV・再エネ機器向け用途が拡大。
今後の展望と課題
カーボンニュートラルに向けた軽量・高機能樹脂への転換、バイオベースPC/ABSやリサイクル原料活用の取り組みが
進展する見通しです。一方で原料価格の不安定さや、供給網の分断リスクへの対応が中長期課題となります。