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はじめに
TPU(Thermoplastic Polyurethane, 熱可塑性ポリウレタン)は、ポリエーテル系・ポリエステル系・ポリカプロラクトン系などに分類される熱可塑性エラストマーで、高い柔軟性・耐摩耗性・耐油性・機械強度を持ち、靴底・工業部材・電線・自動車部品・医療用途に幅広く活用されています。
特に「ソフトで強靭な素材」が求められる分野において、TPUは他の熱可塑性樹脂と比較して優れた選択肢となっています。
市場規模の推移(2022~2025年予測)
- 2022年:推定 28億米ドル
- 2023年:約30億米ドル(前年比+7.1%)
- 2024年:約32億米ドル(推定)
- 2025年予測:約34億米ドル(CAGR 2022-25:約6.6%)
スマートフォン筐体やケースなどエレクトロニクス分野でのTPU採用、EV・自動車業界での軽量・柔軟なケーブル材需要、医療チューブやウェアラブルデバイスでの用途拡大が成長を牽引しています。
市場価格の推移(2023〜2025)
- 2023年平均価格:約3,100 USD/トン(アジアFOB)
- 2024年中盤:約2,850〜2,950 USD/トンに軟化
- 2025年見通し:2,900〜3,100 USD/トン(安定的な価格帯で推移)
原料であるポリオールやイソシアネートの価格変動や、需要の季節性変動によって価格は変動します。
用途別需要動向(2025年予測)
用途カテゴリ | 市場構成比(推定) | 主な特徴 |
---|---|---|
フットウェア・スポーツ | 約30% | TPUフォーム・インソール・ソールに使用。成型性・耐摩耗性が評価される |
工業部材(ホース・ベルト) | 約25% | 柔軟性・耐油性が評価され、建機や産業用資材に多用 |
医療・ヘルスケア | 約15% | 医療チューブやウェアラブル用途で急成長 |
電子部品・ケーブル | 約12% | 耐熱性や難燃性が求められるモバイル・EV用途 |
その他 | 約18% | 3Dプリント、接着剤、ラミネート材などに広がる |
地域別市場シェア
- アジア太平洋:約60%を占め、中国・韓国・日本が主要製造拠点
- 北米・欧州:医療・自動車用途で安定成長
- 中東・アフリカ:今後の成長が見込まれる新興市場
主なメーカーと市場シェア傾向
企業名 | 国籍 | 特徴・強み |
---|---|---|
BASF(エラストラン) | ドイツ | 多品種展開、グローバル対応 |
Covestro(デスモパン) | ドイツ | 環境対応型TPUに注力 |
Lubrizol(エステラ) | 米国 | 医療・エレクトロニクス用途に強み |
LG化学、万洲化学など | 韓国・台湾 | コスト競争力が高く汎用グレードを展開 |
日本ポリウレタン工業 | 日本 | 国内産業用途向けに特化 |
今後の展望と課題
バイオTPU・リサイクルTPUといった環境対応型製品の需要が拡大する一方、原料コストや為替リスク、
地政学的要因による供給不安が課題となります。用途開発・安定供給体制の強化が中長期の成長カギとなります。