
Contents
- 1 ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT Pellet)とは
- 2 まずはここだけ見ればOK|PBTの“推奨グレード方向”クイックガイド
- 3 PBT樹脂|主要メーカーの強みを一目で比較
- 4 ポリプラスチックス(DURANEX® / デュラネックス)
- 5 東レ(TORAYCON™ / トレコン)
- 6 Celanese(Celanex® / Crastin®|PBT)
- 7 BASF(Ultradur® / PBT)
- 8 LANXESS(Pocan® / PBT)
- 9 SABIC(VALOX™ / PBT)
- 10 用途別|PBTグレード選定のチェックリスト
- 11 よくある質問(FAQ)
- 12 関連ページ(あわせて読む)
- 13 なぜPBTが選ばれるのか?|5秒で分かる材料ポジション
- 14 PBT vs 他エンプラ|用途起点の早見比較
- 15 他素材も比較したい方へ
- 16 PBTで失敗しやすいポイントTOP5|ここを潰すと量産が速くなる
- 17 コネクタ用途のPBT|“選び方”専用ブロック
- 18 乾燥・加水分解トラブル回避チェック|3分で事故を減らす
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT Pellet)とは
PBT(Polybutylene Terephthalate / ポリブチレンテレフタレート)樹脂は、電装・コネクタ用途の定番エンプラとして、
耐熱・電気特性・寸法安定・耐薬品のバランスが良く、車載コネクタ、家電部品、スイッチ、精密成形で広く使われます。
一方で、用途によっては加水分解(高温高湿)、乾燥不足、難燃(FR)設計、反り(GF強化)が落とし穴になります。
PBTはグレード設計で性能が大きく変わります。代表的には無充填(標準)、GF強化(10〜30%中心)、
難燃(UL94 V-0等)、耐トラッキング(CTI)、耐加水分解(高温高湿)、高流動(薄肉)など。
まずは「どの要求を最優先するか」を決めると、選定が一気に速くなります。
以下では、PBT樹脂ペレットの主要メーカーと、選定が速くなるクイックガイド/比較表/用途別チェックをまとめました(順不同)。
まずはここだけ見ればOK|PBTの“推奨グレード方向”クイックガイド
PBTは「PBTで行けるか?」より先に、電装(CTI/難燃)・高温高湿(耐加水分解)・反り(GF)・薄肉(流動)の
どれを最優先するかで勝ち筋が決まります。下から自社用途に最も近い“1つ”を選んで、メーカー・グレードへ進むのが最短です。
コネクタ
難燃(UL)
CTI(耐トラ)
耐加水分解
GF強化・低反り
薄肉・高流動
| 用途のタイプ | 最優先すべき特性 | まず選ぶグレード方向 | コメント(落とし穴) |
|---|---|---|---|
| 車載・電装コネクタ | CTI/電気特性・耐熱・寸法安定 | CTI重視(耐トラッキング)+GF強化 | 難燃FRとCTIは設計思想が違う。要求規格(CTI/UL)を先に固定 |
| UL難燃部品(V-0等) | 難燃・耐熱・加工安定 | 難燃(FR)グレード(用途によりハロゲンフリー等) | FRは流動/靭性/外観とトレード。薄肉条件でのUL適合を要確認 |
| 高温高湿(車載・屋外・水回り) | 耐加水分解・長期強度 | 耐加水分解(Hydrolysis stabilized) | 乾燥不足で一発アウトになりやすい。材料+乾燥条件をセットで要件化 |
| 精密・寸法公差が厳しい | 反り・線膨張・寸法再現 | 低反り設計/GF最適化(10〜30%) | GFで反りは減るが、異方性が増える場合も。ゲートと流動方向が支配的 |
| 薄肉・高速成形(多点コネクタ等) | 高流動・ショート対策 | 高流動(薄肉)+結晶化制御 | 流動を上げるほど反り/バリ/強度が動く。型温・充填設計もセットで |
| 外観・着色・表面品位 | 外観・色・ウェルド | 外観グレード(無充填/低GF) | FRやGFは外観を崩しやすい。必要外観レベルを先に決める |
この表で方向性を決めてからメーカーを見ると、「見積を取るグレードカテゴリ」が即決できます。
PBT樹脂|主要メーカーの強みを一目で比較
PBTはメーカーごとに得意領域(コネクタ/CTI、難燃、耐加水分解、低反り、高流動)が違います。
まずは下表で“勝ち筋メーカー”を数社に絞るのが最短ルートです。
電装コネクタ
難燃(FR)
CTI
耐加水分解
GF・低反り
グローバル調達
| メーカー / ブランド | 強いテーマ | 強み(選定軸) | 典型用途 | 調達観点 |
|---|---|---|---|---|
| ポリプラスチックス|DURANEX®(デュラネックス) | 電装・GF・用途整理 | 用途別ラインアップが実務向けで、国内比較の軸にしやすい | コネクタ、家電、精密部品 | 国内調達の基準候補 |
| 東レ|TORAYCON™(トレコン) | 車載・耐久・技術情報 | 車載要求(耐久/高温高湿)を意識した技術展開が見つけやすい | 車載電装、精密成形 | 国内・グローバル両面検討に |
| Celanese|Celanex® / Crastin®(PBT) | グローバル・電装・幅広い改質 | PBTの選択肢が広く、海外拠点統一材や代替検討の候補化に強い | コネクタ、産業、家電 | 海外調達/統一に向く |
| BASF|Ultradur®(PBT) | 難燃・E&E・改質の幅 | E&E向けの改質バリエーションが厚い(FR、流動、耐久系など) | 電装、家電、産業 | 欧州系調達の軸 |
| LANXESS|Pocan®(PBT) | 電装(耐トラ/難燃)・車載 | 電装・EV周辺で押さえたい性能設計(耐トラ/耐久)を持つ | 電装、コネクタ | グローバル候補 |
| SABIC|VALOX™(PBT / ブレンド含む) | 電装・グローバル供給 | PBT系(PBT/PET、PCブレンド含む)で供給地域を確保しやすい | コネクタ、照明、家電 | 複数地域供給の比較に |
最初は「CTI/電装」or「難燃」or「耐加水分解」or「低反り」のどれを最優先するかで、勝ち筋メーカーが決まります。
PBT樹脂ペレット|主要メーカー一覧
ポリプラスチックス(DURANEX® / デュラネックス)
PBT
GF強化
電装
実務ラインアップ
国内基準
DURANEX®は、PBTの基本性能(耐熱・電気特性・寸法安定)を軸に、GF強化や用途別の改質が整理されたシリーズです。
まずは「電装(CTI/難燃)」「耐加水分解」「低反り」「薄肉高流動」のどれを最優先するかを決め、
同カテゴリで他社品と横並び比較すると選定が一気に早くなります。
東レ(TORAYCON™ / トレコン)
PBT
車載
耐久
電装
技術情報
TORAYCON™は、電装・車載での要求(耐熱、電気特性、耐久)を意識したPBTシリーズです。
高温高湿(耐加水分解)やコネクタ用途など、要求条件からカテゴリを固定して比較すると失敗が減ります。
Celanese(Celanex® / Crastin®|PBT)
PBT
グローバル
電装
改質幅広い
比較候補
Celanex® / Crastin®は、PBTの幅広い改質ラインアップを持ち、グローバルでの統一材や代替(BCP)候補として押さえやすいシリーズです。
「難燃」「電装」「耐久」「GF」「薄肉」などのカテゴリを先に固定し、同カテゴリで比較するのが最短ルートです。
BASF(Ultradur® / PBT)
PBT
E&E
難燃
改質
欧州系
Ultradur®は、電気・電子(E&E)用途での要求に合わせた改質の選択肢を持つPBTシリーズです。
難燃(FR)・流動・耐久・低反りなど、要求の優先順位からカテゴリを合わせて比較すると、見積が取りやすくなります。
LANXESS(Pocan® / PBT)
PBT
電装
耐トラ
難燃
車載
Pocan®は、電装・コネクタ用途で押さえたい要求(耐トラッキング、難燃、耐久)を意識したPBTシリーズです。
コネクタは規格(CTI/UL)と薄肉条件が支配的なので、要求条件を先に固定して候補化するのがコツです。
SABIC(VALOX™ / PBT)
PBT
電装
グローバル
ブレンド含む
比較候補
VALOX™は、PBT系(PBT単体に加え、用途によりPBT/PETやPCブレンド等を含む)で、電装・家電・照明などの用途に幅広く使われます。
複数地域で供給を確保したい場合の比較候補として押さえておくと、調達の選択肢が増えます。
用途別|PBTグレード選定のチェックリスト
PBTは「カタログ物性」だけで決めると、高温高湿(加水分解)や乾燥不足で失敗しやすい材料です。
下のチェックで評価条件を固定すると、比較が一気に楽になります。
選定前に固定すべき5項目
| 項目 | 何を決める? | 理由 |
|---|---|---|
| ① 規格(UL/CTI/社内基準) | V-0条件(厚み)/CTI/耐熱要求 | 規格が決まらないと、FR/CTI設計の方向が決まらない |
| ② 高温高湿(加水分解)条件 | 温度×湿度×時間(想定寿命) | 耐久は“温度×水分×時間”で効き方が変わる |
| ③ 乾燥条件(材料管理) | 乾燥温度/時間/露点(基準) | 乾燥不足は強度低下・銀条・ガス・加水分解を誘発しやすい |
| ④ 反り・寸法(ゲート/肉厚/流動方向) | 許容差・肉厚差・ゲート位置 | GFの異方性で反りが増えることもある。設計と型が支配的 |
| ⑤ 薄肉(充填)条件 | 最薄肉・流動長・サイクル | 薄肉は材料だけでなく、型温・ベント・充填設計で結果が変わる |
上の5つが固定できると、グレード比較が“数社×数グレード”に一気に圧縮できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. PBTで一番多い失敗は?
現場で多いのは乾燥不足→加水分解(強度低下/外観不良)です。
PBTは水分に敏感なので、材料選定と同時に乾燥条件(温度・時間・露点)を要件化すると失敗が減ります。
Q2. 難燃(FR)とCTI(耐トラッキング)は同じですか?
別物です。難燃は燃えにくさ(UL94など)、CTIは漏電・トラッキングに対する耐性の指標です。
電装コネクタはこの2つが両方効くことが多いので、要求規格を先に固定して候補グレードを絞ってください。
Q3. GF強化すると反りは減りますか?
剛性が上がって反りが減るケースもありますが、GFは流動方向の異方性を強めるため、設計・ゲートによっては反りが増えることもあります。
低反り設計グレードやゲート最適化とセットで評価するのがコツです。
関連ページ(あわせて読む)
なぜPBTが選ばれるのか?|5秒で分かる材料ポジション
電気特性
耐熱
寸法安定
耐薬品
コネクタ定番
PBTは「万能材料」ではなく、“電装・精密成形のためのバランス材料”です。
特に以下が1つでも当てはまる場合、PBTは第一候補になります。
- ✔ コネクタやスイッチなど電装部品
- ✔ 寸法安定が必要(吸水で狂わせたくない)
- ✔ 難燃(UL)や電気安全要件がある
- ✔ 耐薬品(油・グリース・洗剤)を見たい
- ✔ 高サイクル・量産で安定成形したい
つまりPBTは、「電装・量産・寸法」の交点にある材料です。
PBT vs 他エンプラ|用途起点の早見比較
| 材料 | 得意領域 | 弱点 | PBTとの関係 |
|---|---|---|---|
| PBT | 電装・寸法安定・耐熱 | 高温高湿(加水分解)に注意 | 電装の基準材料 |
| PA(ナイロン) | 靭性・耐熱(用途広い) | 吸水で寸法変化 | 寸法が厳しいならPBT優位 |
| POM | 摺動・ギア・機構 | 電装・難燃は設計次第 | 動く部品はPOM、電装はPBT |
| PC | 耐衝撃・透明 | 耐薬品・摺動は弱い | 衝撃が支配的ならPCも比較 |
| PPS | 高耐熱・高耐薬品 | コスト・設計難度 | 温度/薬品が厳しいならPPS候補 |
迷ったら「電装?規格ある?寸法が厳しい?」
→ YES が1つでもあれば PBT が第一候補です。
他素材も比較したい方へ
PBTで失敗しやすいポイントTOP5|ここを潰すと量産が速くなる
乾燥
加水分解
難燃
反り
薄肉
PBTは電装に強い一方で、条件を外すと割れ・強度低下・外観不良が出やすい材料です。
下の5項目を先に潰すだけで、試作回数と手戻りが減ります。
| よくある失敗 | 起きやすい現象 | まずやる対策 | 代替候補の目安 |
|---|---|---|---|
| ① 乾燥不足のまま成形 | 銀条、強度低下、割れ(加水分解) | 乾燥条件(温度・時間・露点)を規格化して管理 | PPS/PA(用途次第) |
| ② 高温高湿を甘く見る | 長期で強度低下・クラック | 耐加水分解グレードへ+評価条件(温湿度×時間)を固定 | PPS、耐久PA |
| ③ FR/CTI要件が曖昧 | 規格未達・再評価の手戻り | UL(厚み条件)/CTI/耐熱の優先順位を先に決める | PPS、LCP(高難度) |
| ④ GFで反りが増える | 反り・寸法ズレ・組立不良 | 低反り設計グレード+ゲート/流動方向の最適化 | PBT-GF別設計、PPS-GF |
| ⑤ 薄肉でショート・バリ | 充填不足、バリ、外観不良 | 高流動グレード+型温/ベント/充填設計をセットで見直し | LCP、PPA(条件次第) |
コツ:「材料→評価」ではなく、条件→カテゴリ→材料の順にすると最短で決まります。
コネクタ用途のPBT|“選び方”専用ブロック
コネクタ
CTI
UL
薄肉
寸法
コネクタは「PBTならOK」では決まりません。勝負は規格(CTI/UL)と薄肉条件です。
下の“3ステップ”で最短で候補を絞れます。
| ステップ | 決めること | 選ぶグレード方向 | メモ |
|---|---|---|---|
| 1 | 規格(UL94:厚み条件、CTI、耐熱) | FR / CTI重視(要求に合わせる) | 要求が曖昧だと、候補が無限に増える |
| 2 | 薄肉・流動長・多点構造(充填条件) | 高流動(薄肉)+必要ならGF | 材料だけでなく型温/ベントで結果が変わる |
| 3 | 寸法(反り)・嵌合精度・応力集中 | 低反り設計 / GF最適化 | 流動方向の異方性が反りを支配する |
実務TIP: コネクタの割れ・クラックは、材料だけでなく乾燥・応力・ゲート・角Rでも大きく変わります。
材料選定と同時に設計条件も固定すると評価が早く終わります。
乾燥・加水分解トラブル回避チェック|3分で事故を減らす
乾燥
露点管理
加水分解
強度低下
外観
PBTの“勝ち筋”は、材料選定と同じくらい乾燥管理で決まります。
下のチェックがYESなら、トラブルの大半を先に潰せます。
| チェック項目 | YESの目安 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| ① 乾燥条件が規格化されている | 温度・時間・露点が文書化 | 材料ごとに標準条件を定義(FR/GFで変わる場合も) |
| ② 開封後の運用が決まっている | 吸湿対策(保管/再乾燥)が明確 | 現場運用(再乾燥/密閉/投入タイミング)までセットで |
| ③ 高温高湿の評価条件が固定 | 温湿度×時間×荷重の想定がある | 耐加水分解グレードを含めて比較(材料だけでなく工程も) |
| ④ 不良モードが定義されている | 銀条/割れ/強度低下の判定基準 | 不良の“見える化”で材料起因と工程起因を切り分け |
結論: PBTは「材料+乾燥(運用)」がセットです。ここを固めると量産が一気に安定します。