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アクリロニトリル・EPDM・スチレン原料ペレット(AES Pellet)とは
AES(Acrylonitrile Ethylene-Propylene-Diene Styrene)は、ABSのゴム成分(ブタジエン)をEPDM系ゴムに置き換えたスチレン系耐候材料です。
基本的な設計思想はABSに近く、耐衝撃性と剛性のバランスを保ちながら、屋外耐候性(UV・退色・外観保持)を強化できる点が特徴です。
AESは主に射出成形用途で使われ、グレードとしては高流動/高衝撃/超高衝撃/耐熱/高耐熱/押出などが用意されることがあります。
用途は、車載外装・トラック部品・屋外筐体・プール/スポーツ用品など、屋外で衝撃も要求される部材に広がっています。
以下より、AES樹脂ペレット(AES Pellet)を取り扱う主要メーカーと代表ブランドを確認してください(順不同)。
まずはここだけ見ればOK|AESの“推奨グレード方向”クイックガイド
AESは「屋外耐候」だけでなく、実務では衝撃・流動・耐熱・外観のどれを優先するかで最初に方向を決めるのがコツです。
下の項目で自社用途に最も近い“1つ”を選んでからメーカー・グレードに進むと、選定スピードが上がります。
屋外×衝撃
薄肉×高速成形
屋外×耐熱
外観(艶・色)
押出
| 用途のタイプ | 最優先すべき特性 | まず選ぶグレード方向 | コメント(落とし穴) |
|---|---|---|---|
| 屋外筐体・外装(落下/衝撃あり) | 耐衝撃(常温/低温)+耐候 | 高衝撃AES(必要により超高衝撃) | 外観(艶・色)の要求が強い場合はASAとも比較 |
| 薄肉・高速成形(充填が厳しい) | 流動性(MFR) | 高流動AES(Super high flow系) | 流動を上げると衝撃・外観が変わるので要バランス |
| 屋外×耐熱(高温環境・熱変形が課題) | 耐熱(HDT/熱変形)+耐候 | 耐熱AES / 高耐熱AES | 耐熱がさらに厳しいならPC/ASAを検討 |
| 意匠重視(艶・色ムラ・退色が課題) | 外観(艶・色安定・表面欠陥) | 外観重視AES(またはASA) | “外観の守り”はASAが強いケースも多い |
| 押出用途(形材・シート) | 押出安定・外観・耐候 | 押出グレードAES(設定がある場合) | 押出中心ならASA押出グレードも比較推奨 |
この表で方向性を決めてからメーカー一覧を見ると、「どのグレードカテゴリで見積を取るべきか」が即決できます。
AES樹脂|主要メーカーの強みを一目で比較
AESは「屋外耐候」だけでなく、衝撃・流動・耐熱・外観のバランスで選びます。
まず方向性を決めてから、下のメーカー詳細を確認すると選定が速くなります。
国内
耐候
高衝撃
高流動
屋外用途
| メーカー | 立ち位置 | 強み | 典型用途 | 調達観点 |
|---|---|---|---|---|
| テクノUMG | 国内中核 | ダイヤラック耐候AES/テクノAESの系譜でグレード選定しやすい | 車載・屋外筐体 | 国内調達の軸 |
| 日本エイアンドエル | 国内 | ユニブライト™ AES:高流動〜高衝撃〜耐熱まで整理された体系 | 屋外用途、衝撃要求部材 | 物性表PDFが明確 |
まずは「衝撃(高衝撃/超高衝撃)」か「流動(高流動)」か「耐熱」を決めると、グレード選定が早くなります。
AES樹脂ペレット|主要メーカー一覧
テクノUMG株式会社(ダイヤラック耐候AESタイプ / テクノAES)
AES
耐候
高衝撃
高流動
車載・屋外
テクノUMGのAESは、旧UMG系の「ダイヤラック耐候AESタイプ」と、旧テクノポリマー系の「テクノAES」の系譜を持ちます。
屋外用途を想定した耐候性に加え、衝撃・流動・耐熱など用途別にグレードが整理されており、国内AESの基準候補として選定しやすい構成です。
日本エイアンドエル株式会社(ユニブライト™ AES)
AES
耐候
超高流動
高衝撃
耐熱
ユニブライト™ AESは、耐候性に加え、衝撃強さと機械特性、耐熱性・熱老化性のバランスを狙ったAESシリーズです。
超高流動・高衝撃・超高衝撃・耐熱・高耐熱・押出用など、用途に応じた選択肢が用意されています。
ABS / ASA / AES / SAN / PC/ASA / PC/ABS|使い分け早見表
AESは「屋外耐候+衝撃」を狙いやすい材料ですが、用途によりASAやPC系アロイの方が合理的な場合もあります。
まずは何を最優先するかで候補を絞ると選定が速くなります。
目的別:最初の当たりをつける
屋外耐候
高耐衝撃
色安定
耐熱
透明外観
| 材料 | 得意領域 | 弱点(注意点) | 代表用途 |
|---|---|---|---|
| AES | 屋外耐候+高耐衝撃(屋外×衝撃) | 外観(艶/色)や耐熱はグレード依存 | 屋外筐体、外装、スポーツ/プール用品 |
| ASA | 耐候・色安定(外観重視) | 衝撃優先ならAESと比較 | 自動車外装、建材、屋外筐体 |
| ABS | 屋内用途でのバランスとコスト | 屋外耐候は基本弱め | 家電筐体、OA、内装、雑貨 |
| SAN | 透明性・耐薬品(透明意匠) | 耐衝撃はAES/ASAに劣ることが多い | 化粧品容器、透明雑貨、透明筐体 |
| PC/ASA | 屋外耐候+耐熱・耐衝撃(上位側) | コスト上昇/成形条件管理 | 外装・屋外筐体で耐熱も厳しい場合 |
| PC/ABS | 耐熱・耐衝撃(車載・電装) | 屋外耐候はASA系に劣るケース | 車載内装、電装筐体 |
迷ったら、屋外で衝撃も欲しい → AES / 屋外で外観重視 → ASA / 屋内バランス → ABS /
耐熱も厳しい → PC/ASA or PC/ABS / 透明なら SAN
用途別|AESグレード選定のチェックリスト
AESは「耐候」だけでなく、衝撃(常温/低温)、流動(薄肉/高速成形)、耐熱、外観(艶・色安定)の優先順位を固定すると失敗が減ります。
よくある用途と、優先順位の付け方
| 用途 | まず優先すべき特性 | 次点(トレードオフ) | 推奨グレード方向 |
|---|---|---|---|
| 屋外筐体(落下・衝撃あり) | 高衝撃(必要なら超高衝撃)+耐候 | 外観(艶・色) | 高衝撃AES |
| 薄肉・高速成形 | 高流動(充填性) | 衝撃・外観 | 高流動AES |
| 屋外×耐熱(高温環境) | 耐熱+耐候 | 衝撃・反り | 耐熱AES(必要によりPC/ASAへ) |
屋外用途はカタログ値より、退色・艶変化・耐汚染(洗剤/薬品)で差が出ます。重要部材は実環境条件に近い評価を推奨します。
よくある質問(FAQ)
Q1. AESとASAはどう使い分けますか?
外観(色安定・艶保持)を最優先するならASA、屋外で衝撃も強く欲しいならAESを起点に比較すると早いです。
どちらも要求仕様でグレード差が大きいため、候補を2〜3に絞って試作評価するのが定石です。
Q2. AESはABSより必ず強いですか?
AESは屋外耐候を狙える一方で、衝撃・剛性・耐熱・外観のバランスはグレード設計に依存します。
「屋外条件が厳しい」場合にABSの代替候補として有効です。
Q3. 退色や黄変は起きませんか?
耐候材料でも、色・添加剤・環境条件(地域・日射・温湿度)で外観変化の出方が変わります。
長期屋外用途は、材料グレードの選定に加え、必要に応じてUV安定化設計も検討します。
関連ページ(あわせて読む)
AESメーカーはなぜ少ないのか?|市場構造を5分で理解
AES(Acrylonitrile-EPDM-Styrene)は、ABSやASAと同じスチレン系に分類されますが、
実務上は全く別の難易度を持つ材料です。
そのため、現在AESを継続量産しているメーカーは世界的にも限られています。
市場構造
寡占
技術障壁
屋外用途
材料進化
① 技術的に“ABSの延長”では作れない
AESは、ABSのブタジエンゴムの代わりにEPDMゴムを用います。
EPDMは耐候性に優れる一方で、
分散しにくい・表面が荒れやすい・塗装や艶が作りにくいという課題があります。
そのため、ABSのノウハウを持つメーカーでも簡単にはAESを量産できません。
② 市場の要求は「外観」へ移動した
自動車外装や建材では、
耐衝撃よりも「色安定性・艶・意匠」が重要視されるようになりました。
この流れで、AESの代わりにASAが主流となり、
多くのメーカーがAESから撤退しました。
③ 上位用途はPC系アロイへ移行
より高い耐熱・耐衝撃が必要な用途では、
PC/ASAやPC/ABSが採用されるようになり、
AESの役割は「屋外×コスト×衝撃」のニッチ市場に収束しています。
④ 現在のAES供給構造
| 地域 | 実質サプライヤー | 備考 |
|---|---|---|
| 日本 | テクノUMG / 日本エイアンドエル | 事実上の二社寡占 |
| 韓国・アジア | LG Chem / LOTTE | 地域・用途限定の供給 |
| 欧米 | SABIC / INEOS(限定) | 主流はASA / PC系 |
つまりAESは、「少数の専門メーカーだけが供給するニッチ耐候材料」という位置付けです。
このため、メーカー比較とグレード選定を整理したページの価値が高くなります。