
PPS(Polyphenylene Sulfide)は、耐熱(高温連続)・耐薬品・難燃(自己消火)・低吸水(寸法安定)が強いスーパーエンプラです。
車載(電動化含む)・電装(コネクタ/端子周辺)・ポンプ/バルブ等の流体部品・水回り部材で「PA/PBTでは持たない温度・薬品」を超えるときに選択肢に入ります。
一方で、PPSは「入れれば勝ち」ではなく、選定を外すと脆さ(衝撃)・溶着/ウェルド割れ・反り(GF)・外観(焼け/銀条)・金型設計/温度条件が落とし穴になります。
PPSはまず「直鎖型(tough/汎用)」or「架橋型(耐熱/流動/剛性寄り)」、次にGF量(30〜40%)/低反り/摺動/導電/熱伝導のどれが要件かを先に固定すると、メーカー候補が一気に絞れます。
Contents
- 1 基礎を先に押さえる(1分)|PPSとは?
- 2 まずはここだけ見ればOK|PPSの“推奨グレード方向”クイックガイド
- 3 PPS|主要メーカーの強みを一目で比較
- 4 PPSで失敗しやすいポイントTOP5|ここを潰すと試作が速くなる
- 5 PPS vs 他エンプラ|用途起点の早見比較
- 6 電装・コネクタ用途のPPS|“選び方”専用ブロック
- 7 寸法・反りトラブル回避チェック|3分で事故を減らす
- 8 PPS樹脂ペレット|主要メーカー(公式リンク)
- 9 ポリプラスチックス株式会社(DURAFIDE®|PPS)
- 10 東レ株式会社(TORELINA™|PPS)
- 11 株式会社呉羽(Fortron KPS|PPS)
- 12 Celanese(Fortron®|PPS)
- 13 Syensqo(旧Solvay)(Ryton® PPS)
- 14 Envalior(Xytron™|PPS)
- 15 DIC株式会社(PPSコンパウンド|DIC.PPS)
- 16 よくある質問(FAQ)
- 17 関連ページ(あわせて読む)
- 18 なぜPPSなのか?|「PA/PBTでは持たない条件」を一気に越える理由
基礎を先に押さえる(1分)|PPSとは?
材料基礎 耐熱 耐薬品 低吸水 難燃
PPSの特徴(耐熱・耐薬品・難燃・寸法安定)や、用途の考え方は下記ページにまとめています。
“材料の全体像 → 用途別の勝ち筋 → メーカー候補化”の順に見ると、選定が最短で終わります。
まずはここだけ見ればOK|PPSの“推奨グレード方向”クイックガイド
PPSの勝ち筋は、「温度(連続/ピーク)」「薬品(燃料/オイル/冷却液/洗剤)」「寸法(反り/吸水)」「電装(難燃・CTI・耐トラ)」「強度(GF)」「熱(放熱/熱伝導)」のどれを最優先するかで決まります。
下の表で自社用途に最も近い“1つ”を選び、そこからメーカー候補へ進むのが最短です。
直鎖PPS GF30-40% 低反り 電装 流体部品 放熱
| 用途のタイプ | 最優先すべき特性 | まず選ぶグレード方向 | コメント(落とし穴) |
|---|---|---|---|
| 高温・薬品(ポンプ/バルブ/流体) | 耐薬品・寸法・長期耐熱 | 直鎖PPS(tough)+GF強化(30〜40%) | 金型温度が低いと結晶/寸法が不安定に。成形条件もセットで |
| 電装(コネクタ/端子周辺) | 難燃・電気特性・寸法 | 電装向けPPS(低反り/高剛性)+必要なら高CTI系 | 薄肉条件と規格(厚み/温度)を先に固定。材料だけで終わらない |
| EV/放熱(熱マネ・筐体) | 熱伝導・寸法・難燃 | 熱伝導/放熱グレード(フィラー設計) | 熱と機械の両立はトレードオフ。優先順位を先に決める |
| 低反り・精密(嵌合/公差厳しい) | 反り・寸法・成形再現性 | 低反り設計(GF+ミネラル等)/流動設計系 | ゲート/流動方向で反りが支配。材料+金型で決まる |
| 摺動・摩耗(機構部) | 耐摩耗・低摩擦・剛性 | 摺動改質(潤滑/耐摩耗)+必要ならGF | 相手材・温度・面圧で結果が変わる。評価条件固定が重要 |
この表で方向性を決めてからメーカーを見ると、見積を取る“グレードカテゴリ”が即決できます。
PPS|主要メーカーの強みを一目で比較
PPS 直鎖 GF強化 電装 流体 グローバル調達
| メーカー / ブランド | 強いテーマ | 強み(選定軸) | 典型用途 | 調達観点 |
|---|---|---|---|---|
| ポリプラスチックス|DURAFIDE®(PPS) | 国内定番・幅広いグレード | 用途別に探しやすく、PPSの比較軸(汎用/強化/改質)を作りやすい | 車載、電装、水回り | 国内調達の基準候補 |
| 東レ|TORELINA™(PPS) | 耐熱・寸法・水回り認証 | 耐熱/寸法安定のバランスで比較候補に上がりやすい | 水回り、産業、電装 | 認証/用途要件で強い |
| 呉羽化学工業|Fortron KPS(PPS) | 直鎖PPS(タフ寄り) | 直鎖型PPSで“脆さ”の弱点を潰す比較軸になりやすい | 車載、電装、産業 | 直鎖PPSの代表候補 |
| Celanese|Fortron®(PPS) | グローバルPPS | PPSの代表銘柄として代替検討のベースに上がりやすい | 電装、車載、産業 | グローバル比較 |
| Syensqo(旧Solvay)|Ryton® PPS | 高耐熱・寸法・コスパ | 耐熱/寸法安定のバランスで“精密×高温”領域の比較候補 | 電装、車載、工業 | 海外比較の軸 |
| Envalior|Xytron™(PPS) | PPSコンパウンド | 用途別のグレード探索(GF/改質)で比較候補に上がりやすい | 車載、E&E、産業 | 多地域供給/BCP |
| DIC|PPSコンパウンド(DIC.PPS) | コンパウンド設計 | 用途要求(剛性/反り/電装等)に合わせた材料設計の比較軸 | 電装、車載、産業 | 仕様設計で刺さる |
最初は「直鎖PPSでタフさを取りに行く」or「GFで剛性・寸法を取りに行く」or「電装/放熱の機能を取りに行く」のどれを軸にするかで、勝ち筋メーカーが決まります。
PPSで失敗しやすいポイントTOP5|ここを潰すと試作が速くなる
金型温度 反り 脆さ ウェルド 外観
PPSは強い材料ですが、条件を外すと割れ・反り・寸法ズレ・外観不良が出やすいです。
下の5項目を先に潰すだけで、手戻りが大きく減ります。
| よくある失敗 | 起きやすい現象 | まずやる対策 | 代替候補の目安 |
|---|---|---|---|
| ① 金型温度/結晶化の考慮不足 | 寸法ばらつき、反り、強度ムラ | 材料だけでなく金型温度・冷却を要件化(試作条件を固定) | PPA / LCP(薄肉電装) |
| ② GFで反り・寸法が崩れる | 反り、嵌合不良、組立不良 | 低反り設計グレード+ゲート/流動方向の最適化(型が支配的) | PBT-GF / PA-GF(温度が許せば) |
| ③ “PPSは脆い”問題を放置 | 衝撃割れ、落下割れ、ウェルド割れ | 直鎖PPS(tough)や耐衝撃改質を最初から候補化。角R/応力集中も同時に潰す | PPA(タフ系)/ PA(温度次第) |
| ④ 外観(焼け/銀条/ガス) | 焼け、ガス跡、充填不良 | ベント設計・射出速度・滞留を見直し。過度な滞留/温度条件の固定 | LCP(外観/薄肉) |
| ⑤ “薬品OK”の前提が曖昧 | 実液での膨潤/クラック/劣化 | 薬品は濃度×温度×時間×応力で結果が変わる。実条件で固定して比較 | PEEK / フッ素系(超過酷) |
コツ:「材料→評価」ではなく、条件(温度/薬品/寸法)→カテゴリ(PPSの型)→材料の順にすると最短で決まります。
PPS vs 他エンプラ|用途起点の早見比較
| 材料 | 得意領域 | 弱点 | PPSとの関係(使い分け) |
|---|---|---|---|
| PPS | 高耐熱・耐薬品・低吸水・難燃 | 脆さ/ウェルド/金型温度の影響が大きい | “温度×薬品×寸法”が厳しいときの本命 |
| PBT | 電装・寸法安定・量産安定 | 温度/薬品の上限はPPSほど強くない | 温度が許せばPBTが量産最適解になりやすい |
| PA(ナイロン) | 靭性・摺動・コスパ(改質幅) | 吸水(寸法)・高温高湿 | 寸法/薬品/温度が厳しくなるとPPSへ |
| LCP | 薄肉・精密・高耐熱(電装) | 設計の癖/コスト/用途限定 | 薄肉電装の最終カード。PPSで流れない/精度が出ないときに |
| PEEK | 超耐熱・超耐薬品・高信頼 | 高コスト・加工難度 | PPSの上位互換領域(“さらに上”が必要なら) |
迷ったら「温度上限」「薬品(実液)」「公差(反り)」を先に固定すると、候補が自然に絞れます。
電装・コネクタ用途のPPS|“選び方”専用ブロック
電装 コネクタ 難燃 寸法 低反り
電装・コネクタは「PPSでOK」では決まりません。勝負は規格(難燃/電気)と薄肉・反り、そしてウェルド/割れです。
下の3ステップで、候補を一気に絞れます。
| ステップ | 決めること | 選ぶ材料方向 | メモ |
|---|---|---|---|
| 1 | 温度要件(リフロー/周辺温度)・規格条件(厚み) | 電装向けPPS(規格対応系) | 厚み条件が曖昧だと候補が無限に増える |
| 2 | 薄肉・流動長・多点(充填条件) | 高流動+必要ならGF | 材料だけでなく型温/ベントで結果が変わる |
| 3 | 反り・寸法・割れ(ウェルド/応力) | 低反り設計/必要なら直鎖PPS(タフ)も比較 | 評価は“同一金型・同一条件”で比較が鉄則 |
実務TIP: コネクタの割れ/クラックは、材料だけでなくゲート・角R・応力・ベントでも大きく変わります。
寸法・反りトラブル回避チェック|3分で事故を減らす
反り 金型温度 流動方向 GF 嵌合
PPSは低吸水で寸法が強い一方、GF配向と結晶化(型温)で反り・寸法が決まりやすい材料です。
下のチェックがYESなら、トラブルの大半を先に潰せます。
| チェック項目 | YESの目安 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| ① 反りの許容値(公差)が決まっている | 嵌合・シールで許容が明確 | “反りが支配”なら低反り設計を最優先で候補化 |
| ② 金型温度/冷却条件が固定できる | 試作〜量産で同等運用が可能 | PPSは型温で結果が変わりやすい。条件を先に標準化 |
| ③ 流動方向(配向)を設計できる | ゲート位置/多点の自由度 | 材料だけでなく、ゲート/肉厚/リブで反りを潰す |
| ④ ウェルド・応力の対策がある | 割れのリスク部位が把握できている | 直鎖PPS/耐衝撃改質や、形状(角R/応力分散)もセットで |
結論: PPSは「材料+金型温度(運用)」がセット。ここを固めると量産が一気に安定します。
PPS樹脂ペレット|主要メーカー(公式リンク)
※撤退・統合などで情報が古くなると比較が崩れるため、公式リンク起点でたどれる構成にしています(順不同)。
ポリプラスチックス株式会社(DURAFIDE®|PPS)
PPS GF強化 電装 車載 国内基準
DURAFIDE® PPSは、PPSの代表シリーズとして、用途別(強化/改質/電装)に候補を作りやすいのが特長です。
まずは「GF量(30/40)」「低反り」「電装向け」「流体向け」のどれを優先するかを決め、同カテゴリで横並び比較すると選定が速くなります。
東レ株式会社(TORELINA™|PPS)
PPS 耐熱 寸法安定 水回り 認証
TORELINA™は、PPSの耐熱・寸法安定を軸に用途展開しやすいシリーズです。
水回りなどは用途認証(規格)の有無が勝負になるため、用途要件とセットで候補化すると手戻りが減ります。
株式会社呉羽(Fortron KPS|PPS)
直鎖PPS タフ 耐熱 耐薬品 車載/電装
Fortron KPSは、直鎖型PPSとして、PPSの弱点になりやすい“脆さ”側の課題を潰す比較軸になりやすい材料です。
割れ・ウェルドが問題になりそうなら、直鎖PPS(tough)を最初から候補に入れると試作が速くなります。
Celanese(Fortron®|PPS)
PPS グローバル 電装 車載 代替検討
Fortron® PPSは、PPSの代表銘柄としてグローバル比較の“軸”になりやすい材料です。
海外調達や多地域での代替検討が絡む場合、まずFortron®をベンチマークに置くと比較が進みやすくなります。
Syensqo(旧Solvay)(Ryton® PPS)
Ryton 高耐熱 寸法安定 電装 海外比較
Ryton® PPSは、精密成形部品向けの寸法安定・高耐熱を軸に比較候補に上がりやすいPPSブランドです。
Envalior(Xytron™|PPS)
PPS コンパウンド GF 耐薬品 多地域供給
Xytron™はPPSベースの高性能材料として、用途(車載/E&E/産業)に合わせたグレード探索がしやすいシリーズです。
DIC株式会社(PPSコンパウンド|DIC.PPS)
PPS コンパウンド 電装 反り 仕様設計
DICはPPSコンパウンドの製品情報(概要/ラインアップ)を公式ページで整理しており、用途要求に合わせた“仕様設計”の比較をしやすいのが特長です。
よくある質問(FAQ)
Q1. PPSで一番多い失敗は?
多いのは反り(GF配向)と割れ(ウェルド/応力)です。
PPSは吸水で寸法が動きにくい反面、金型温度(結晶化)と流動方向が支配的になりやすいので、試作条件を固定して比較すると手戻りが減ります。
Q2. 直鎖PPSと(架橋寄り)PPSはどう使い分ける?
ざっくり言うと、タフさ(割れにくさ)を取りたいなら直鎖PPS側を早めに比較、剛性/耐熱/流動を優先するなら用途カテゴリ(GF量/低反り/電装)を固定して比較が進みやすいです。
最終的にはGF・低反り・耐衝撃・電装向けなど“グレード設計”で差が出ます。
Q3. PBTやPAからPPSへ切り替える判断基準は?
目安は温度・薬品・公差です。
PBT/PAで高温×薬品×寸法(反り/変形)が厳しくなったら、PPSの比較価値が上がります。迷ったら、実液×温度×時間×応力の条件を固定して比較すると結論が早いです。
関連ページ(あわせて読む)
比較検討 材料基礎 エンプラ
なぜPPSなのか?|「PA/PBTでは持たない条件」を一気に越える理由
高耐熱 耐薬品 低吸水 難燃 寸法安定 EV/電装
PPSが選ばれる理由はシンプルで、「温度×薬品×寸法(吸水)」の同時要求が来たとき、PA/PBTの延長線では厳しくなる領域を一気に越えられるからです。
特に電動化(高温・電装・冷却液)や流体部品(薬品×温度)では、PPSの優位性がはっきり出ます。
| PPSを選ぶ典型トリガー | 現場で起きがちな問題(PA/PBT) | PPSが刺さる理由 | 実務の注意点 |
|---|---|---|---|
| ① 高温が上がっていく(連続/ピーク) | 変形、強度低下、長期での割れ | 高温域で物性が落ちにくく、高温環境でも設計が成立しやすい | 金型温度・結晶化条件で寸法が変わるので試作条件固定が重要 |
| ② 薬品(燃料/オイル/冷却液/洗剤)が絡む | 膨潤、クラック、応力割れ | 耐薬品が強く、流体部品で採用されやすい | 薬品は濃度×温度×時間×応力で結果が変わる(実条件で比較) |
| ③ 寸法(吸水)で詰む | 嵌合不良、公差未達、再現性が崩れる | 低吸水で寸法が動きにくいため、公差が厳しい部品で有利 | 吸水より反り(GF配向)が支配的になりやすい |
| ④ 電装の難燃・電気要件が厳しい | 薄肉で規格が通らない、温度で不安 | 難燃・電装材料としての実績があり、薄肉電装の比較軸になる | 規格は厚み条件が肝。曖昧だと比較が終わらない |
| ⑤ EV/放熱(熱マネ)がテーマになる | 熱が逃げない、筐体が歪む、耐熱不足 | 熱伝導(放熱)グレードがあり、機能材として選べる | 熱伝導は機械特性/反りとトレードオフ。優先順位固定が必須 |
結論:「温度・薬品・寸法」のうち2つ以上が同時に厳しいなら、PPSは“検討コストに見合う”確率が高い材料です。
ただしPPSの落とし穴は反り(GF配向)と割れ(ウェルド/応力)なので、材料だけでなく金型・ゲート・条件まで含めて比較すると、試作が速くなります。