はじめに
ペロブスカイト太陽電池(Perovskite Solar Cell)は、高効率・低コスト化の可能性を秘めた次世代太陽電池として世界的に注目されています。 有機-無機ハイブリッド構造のペロブスカイト結晶を用い、従来のシリコン太陽電池に匹敵する変換効率(25%以上)を実現可能であり、 薄膜・軽量で曲面対応も可能な特性から、建材一体型(BIPV)やIoT機器用途などに広がりを見せています。
世界市場規模の推移(2022〜2025年予測)
- 2022年: 約2億米ドル(実証段階)
- 2023年: 約3.2億米ドル(初期商用化)
- 2024年: 約5.6億米ドル(推定)
- 2025年予測: 9億〜10億米ドル(CAGR:45%以上)
市場はまだ黎明期ながら、商用化の進展により急成長フェーズへと移行しつつあります。 特に中国・欧州を中心に政府支援とベンチャー主導の設備投資が拡大中です。
価格動向と量産化への課題
ペロブスカイト太陽電池は、材料・プロセスが比較的安価で、コスト構造的にはシリコン系の50〜60%程度まで低減可能と見込まれています。 ただし、以下の課題が残っています:
- 耐久性・劣化問題: 湿気や紫外線に弱く、長期信頼性の検証が必要。
- 鉛使用リスク: 多くの高効率構造で鉛が使われており、環境負荷の議論が継続。
- 量産スケール技術: ロール・ツー・ロール塗布などスケーラブルな製造技術の確立がカギ。
用途別展望と技術動向
- BIPV(建材一体型太陽電池): 窓ガラス・屋根材として都市部の再エネ導入を加速。
- IoT・ウェアラブル用途: 曲面対応・軽量特性を活かし、モバイル端末やセンサーへの実装が期待。
- 衛星・航空分野: 超軽量・高出力の特性から宇宙用途にも研究進行中。
地域別動向
- 中国: 補助金支援のもと量産ライン建設が進行。TCL・GCLなどが主導。
- 欧州: Oxford PV(独)などが商用化第1号を発表。効率30%以上を目指す。
- 日本: 大手化学企業や大学発ベンチャーが要素技術開発を継続。NEDOも支援。
今後の展望
ペロブスカイト太陽電池は、今後5年で商用量産フェーズへの移行が見込まれ、全世界での普及が加速する可能性があります。 劣化耐性や鉛代替、リサイクル性の向上が技術面のカギとなりますが、再生可能エネルギー全体の成長において 非常に重要な役割を果たすと期待されています。
本レポートは、各国のエネルギー統計、学術論文、業界レポートなどを参考に当協会が独自に再編したものです。