
LCP(Liquid Crystal Polymer:液晶ポリマー)は、分子が規則正しく配向した“液晶状態”を形成するスーパーエンプラです。
とくに薄肉流動性・高耐熱性・寸法安定性・難燃性に優れ、電子・通信・車載分野で不可欠な材料となっています。
本記事では、LCPの主要特性と、実務での用途設計の考え方を整理します。
LCPの主な特徴
① 薄肉流動性(Ultra High Flow)
LCPの最大の特徴は、極めて高い流動性です。
- 0.1~0.2mmの超薄肉成形が可能
- 高アスペクト比部品に適する
- 微細ピッチコネクタやアンテナ部品に最適
- 低圧での充填が可能 → 金型負荷が低い
これは、分子がせん断方向に整列することで粘度が低下するためです。
用途例
- スマートフォン用微細コネクタ
- 高周波対応アンテナ部品
- 精密センサーハウジング
② 高耐熱性(Heat Resistance)
LCPは融点が約280~330℃と高く、連続使用温度も200℃前後に達します。
- 鉛フリーリフロー(260℃)対応
- 高温環境下での機械強度維持
- 熱劣化が少ない
特に電子部品用途ではリフロー耐性が重要で、LCPはPBTやPAを上回る耐熱安定性を持ちます。
③ 寸法安定性(Low Warpage / Low CTE)
LCPは線膨張係数(CTE)が非常に低く、金属に近い挙動を示します。
- 低吸水性(ほぼ0%に近い)
- 湿度変化による寸法変化が小さい
- 反りが少ない
- 精密嵌合部品に最適
ただし、流動方向と直角方向で物性差(異方性)が出やすい点には注意が必要です。
④ 難燃性(Inherent Flame Retardancy)
LCPはハロゲン系難燃剤なしでもUL94 V-0を取得可能なグレードが多く、
- 自己消火性
- 低発煙
- 電子部品規格に適合しやすい
環境規制(RoHS、REACH)対応もしやすい材料です。
LCPの弱点も理解する
設計時には強みだけでなく制約も重要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 衝撃強度 | やや脆い |
| 溶着強度 | ウェルド部が弱くなりやすい |
| 異方性 | 強度・CTEに方向差あり |
| コスト | 汎用樹脂より高価 |
したがって、構造設計とゲート設計が極めて重要になります。
用途の考え方(設計指針)
① 「薄肉 × 高精度 × 耐熱」が必要か?
LCPは万能材料ではありません。次の3条件が揃うとき、最適解になりやすいです。
- 肉厚0.3mm以下
- リフロー工程あり
- 嵌合精度が厳しい
これらが不要なら、PBTやPAの方がコスト合理性が高い場合もあります。
② 電子部品用途が主戦場
LCPの市場の大半は電子・通信分野です。
- 高速コネクタ
- SMT対応部品
- 5Gアンテナ部材
- 車載ECU部品
特に高周波特性(低誘電率・低誘電正接)を活かした用途が拡大しています。
③ 金型設計が成否を分ける
LCPは配向性が強いため、ゲート位置・流動方向・肉厚バランスが性能を左右します。
設計初期から材料メーカーとCAE解析を行うことが成功の鍵です。
代表的LCPメーカー
- Celanese(Vectra)
- 住友化学(Sumikasuper LCP)
- Solvay
- 東レ
各社で流動性・強度・高周波特性に差があります。
5. 今後の市場動向
LCPは以下の分野で拡大しています。
- 5G / 6G通信
- EV車載電子化
- 小型化・高密度化部品
- 高周波アンテナモジュール
特にミリ波帯通信では、低誘電材料として重要度が増しています。