
LCP(Liquid Crystal Polymer / 液晶ポリマー)は、薄肉でも流れる(超高流動)・高耐熱(リフロー対応)・低吸水(寸法安定)・難燃(自己消火)が揃うスーパーエンプラです。
特に電装コネクタ(SMT/リフロー)・高密度/薄肉部品・精密嵌合・小型ギア/機構部(条件次第)で、「PPS/PPAでも薄肉が流れない」「反り/寸法が詰む」「耐熱が足りない」領域の最終カードになりやすい材料です。
一方でLCPは“入れれば勝ち”ではなく、選定を外すと反り(異方性)・層状割れ/クラック(ウェルド/応力)・バリ(低粘度)・外観(ジェッティング/ガス焼け)・接着/塗装の難しさが落とし穴になります。
LCPはまず「薄肉流動(0.1〜0.3mm級)」「平面度/低反り」「耐熱(リフロー温度)」「高剛性(GF/ミネラル)」「摺動/低摩耗」のどれを最優先するかを固定すると、メーカー/グレード候補が一気に絞れます。
Contents
- 1 基礎を先に押さえる(1分)|LCPとは?
- 2 まずはここだけ見ればOK|LCPの“推奨グレード方向”クイックガイド
- 3 LCP|主要メーカーの強みを一目で比較
- 4 LCPで失敗しやすいポイントTOP5|ここを潰すと試作が速くなる
- 5 LCP vs 他エンプラ|用途起点の早見比較
- 6 電装・コネクタ用途のLCP|“選び方”専用ブロック
- 7 寸法・反りトラブル回避チェック|3分で事故を減らす
- 8 LCP樹脂ペレット|主要メーカー(公式リンク)
- 9 Celanese(Vectra® / Zenite®|LCP)
- 10 ポリプラスチックス株式会社(LAPEROS®|LCP)
- 11 住友化学株式会社(SUMIKASUPER™|LCP)
- 12 液晶ポリマー(LCP樹脂) ザイダー(Xydar®)|国内:ENEOSサンエナジー
- 13 東レ株式会社(SIVERAS™|LCP)
- 14 上野製薬株式会社(UENO LCP®)
- 15 よくある質問(FAQ)
- 16 関連ページ(あわせて読む)
- 17 なぜLCPなのか?|「PPS/PPAでは詰む条件」を一気に越える理由
基礎を先に押さえる(1分)|LCPとは?
材料基礎 薄肉 高流動 高耐熱 低吸水 難燃
LCPの特徴(薄肉流動・耐熱・寸法安定・難燃)や、用途の考え方は下記ページにまとめています。
“材料の全体像 → 用途別の勝ち筋 → メーカー候補化”の順に見ると、選定が最短で終わります。
まずはここだけ見ればOK|LCPの“推奨グレード方向”クイックガイド
LCPの勝ち筋は、「薄肉(最小肉厚)」「リフロー温度(鉛フリー想定)」「平面度(反り/ねじれ)」「電気(難燃/CTI/絶縁)」「強度(GF/ミネラル)」「摺動(摩耗/摩擦)」「外観(黒/ナチュラル/レーザー)」のどれを最優先するかで決まります。
下の表で自社用途に最も近い“1つ”を選び、そこからメーカー候補へ進むのが最短です。
薄肉 SMT/リフロー 高流動 低反り GF/ミネラル 電装
| 用途のタイプ | 最優先すべき特性 | まず選ぶグレード方向 | コメント(落とし穴) |
|---|---|---|---|
| 薄肉SMTコネクタ(0.1〜0.3mm級) | 超高流動・耐熱(リフロー)・難燃 | 超高流動LCP(非強化 or 低GF)+必要なら低反り設計 | 流れるほどバリ/ガス焼けが出やすい。ベント/型精度もセットで |
| 平面度が最重要(反りNG) | 低反り・低CTE・寸法再現性 | 低反り設計(GF+ミネラル等)/配向を抑える設計系 | 材料だけでなくゲート/流動方向が支配。金型設計で勝負が決まる |
| 高剛性・強度(薄肉でも剛性) | 曲げ剛性・耐クリープ・寸法 | GF強化(30〜40%級)/高剛性シリーズ | GFで反りが増える方向もある。低反り設計とセットで |
| 耐熱を最優先(高温周辺/長期) | 耐熱老化・寸法・電気特性 | 高耐熱タイプ(用途温度に合わせる) | 「短期リフロー」か「長期連続温度」かを先に分けると迷わない |
| 摺動・摩耗(機構/可動) | 耐摩耗・低摩擦・鳴き | 摺動改質(潤滑/耐摩耗)+必要ならGF | 相手材・面圧・温度で結果が変わる。評価条件固定が重要 |
この表で方向性を決めてからメーカーを見ると、見積を取る“グレードカテゴリ”が即決できます。
LCP|主要メーカーの強みを一目で比較
LCP 薄肉 電装 低反り 高剛性 グローバル調達
| メーカー / ブランド | 強いテーマ | 強み(選定軸) | 典型用途 | 調達観点 |
|---|---|---|---|---|
| Celanese|Vectra® / Zenite®(LCP) | グローバル定番・薄肉電装 | 薄肉・耐熱・電装向けの代表銘柄。比較の“ベンチマーク”に置きやすい | コネクタ、ソケット、精密部品 | 多地域比較の軸 |
| ポリプラスチックス|LAPEROS®(LCP) | 薄肉・高流動・精密 | 薄肉精密の探索がしやすく、シリーズで“高流動/低反り/強化”を作りやすい | 小型コネクタ、精密嵌合 | 国内調達の基準候補 |
| 住友化学|SUMIKASUPER™(LCP) | 高耐熱・超高流動 | 耐熱×薄肉の設計に寄せやすい。電装や薄肉で候補に上がりやすい | コネクタ、LED/電装周辺 | 国内・アジア調達で強い |
| Xydar®(Solvay系)|国内:ENEOSサンエナジー取扱 | 平面度/剛性・コネクタ | “低反り・高剛性・強ウェルド”など、コネクタ設計の癖に刺さるカテゴリが作りやすい | コネクタ、精密部品 | 国内サイト起点で追いやすい |
| 東レ|SIVERAS™(LCP) | 国内LCPの選択肢 | 国内メーカーとして比較軸に置きやすい。用途要件で検討しやすい | 電装、精密部品 | 国内調達/BCP |
| 上野製薬|UENO LCP® | 独自開発・国内LCP | 高流動/耐熱/高強度など用途別のタイプを作りやすい(相談起点で進めやすい) | 電装、精密、工業用途 | 国内相談で進めやすい |
最初は「薄肉を通す(高流動)」or「平面度を守る(低反り)」or「剛性を取りに行く(強化)」のどれを軸にするかで、勝ち筋メーカーが決まります。
LCPで失敗しやすいポイントTOP5|ここを潰すと試作が速くなる
反り 異方性 ウェルド バリ 外観
LCPは強い材料ですが、条件を外すと反り・割れ・バリ・外観不良が出やすいです。
下の5項目を先に潰すだけで、手戻りが大きく減ります。
| よくある失敗 | 起きやすい現象 | まずやる対策 | 代替候補の目安 |
|---|---|---|---|
| ① 異方性(配向)を甘く見る | 反り/ねじれ、平面度NG、方向で物性が変わる | ゲート位置・流動方向・肉厚を先に設計。低反り設計グレードも同時に比較 | PPS(反り許容なら)/ PPA |
| ② ウェルド/応力で割れる(層状割れ) | ウェルド割れ、組立時クラック、落下割れ | 角R・応力集中を潰し、ウェルド位置を制御。強ウェルド/タフ寄りのグレードも候補化 | PPA(タフ系)/ PA(温度次第) |
| ③ バリ(低粘度)で金型が勝てない | バリ、寸法NG、型合わせ部の摩耗 | 型精度・型締め・ガス抜きの最適化。射出条件だけで勝とうとしない | PPS(流動が足りるなら) |
| ④ 外観(ジェッティング/焼け/ガス) | 流れ模様、焼け、ガス跡、充填不良 | ベント設計・射出速度プロファイル・滞留対策。ゲート設計が効きやすい | PPS / PBT(外観優先なら) |
| ⑤ 接着/塗装/二次加工の前提が曖昧 | 接着しない、塗装が乗らない、印字が安定しない | 二次加工が必要なら表面処理/プライマー/レーザーマーキング対応など要件を先に固定 | PPA / PEI(要件次第) |
コツ:「材料→評価」ではなく、条件(肉厚/リフロー/反り許容)→カテゴリ(LCPの型)→材料の順にすると最短で決まります。
LCP vs 他エンプラ|用途起点の早見比較
| 材料 | 得意領域 | 弱点 | LCPとの関係(使い分け) |
|---|---|---|---|
| LCP | 薄肉・精密・SMTリフロー・難燃 | 異方性(反り)・割れ(ウェルド/層状)・バリ | 薄肉電装の最終カード。PPS/PPAで詰むときに |
| PPS | 耐熱・耐薬品・低吸水・量産安定 | 薄肉流動はLCPほど強くない | まずPPSで成立確認 → 薄肉/精度で詰んだらLCP |
| PPA | 高耐熱・靭性(タフ)・電装 | 吸水/寸法や薬品は設計が必要 | 割れにくさを優先するならPPA、薄肉/リフロー最優先ならLCP |
| PBT | 電装・寸法安定・量産コスパ | リフロー温度/薄肉は限界が出やすい | 温度が許せばPBTが量産最適解、薄肉/耐熱が上がるとLCP |
| PA(ナイロン) | 靭性・摺動・改質幅 | 吸水(寸法)・高温高湿 | 寸法/耐熱/難燃が厳しいならLCP側へ |
| PEEK | 超耐熱・超耐薬品・高信頼 | 高コスト・加工難度 | LCPでも耐熱/薬品が足りない“さらに上”の領域 |
迷ったら「最小肉厚」「リフロー温度」「平面度(反り許容)」を先に固定すると、候補が自然に絞れます。
電装・コネクタ用途のLCP|“選び方”専用ブロック
電装 コネクタ SMT 薄肉 低反り 難燃
電装・コネクタは「LCPならOK」では決まりません。勝負は肉厚(最小)とリフロー温度、そして平面度(反り)と割れ(ウェルド/応力)です。
下の3ステップで、候補を一気に絞れます。
| ステップ | 決めること | 選ぶ材料方向 | メモ |
|---|---|---|---|
| 1 | リフロー条件(ピーク温度/回数)・難燃/電気規格(厚み条件) | 電装向けLCP(規格対応系) | 厚み条件が曖昧だと候補が無限に増える |
| 2 | 最小肉厚・流動長・多点(充填条件) | 超高流動(非強化〜低強化)+必要なら低反り設計 | 材料だけでなく型精度/ベントで結果が変わる |
| 3 | 反り・平面度・割れ(ウェルド/応力) | 低反り設計/強ウェルド系も比較 | 評価は“同一金型・同一条件”で比較が鉄則 |
実務TIP: コネクタの割れ/クラックは、材料だけでなくゲート・角R・応力・ベント・バリでも大きく変わります。
寸法・反りトラブル回避チェック|3分で事故を減らす
反り 平面度 流動方向 ゲート 嵌合
LCPは低吸水で寸法が強い一方、配向(異方性)で反り・寸法が決まりやすい材料です。
下のチェックがYESなら、トラブルの大半を先に潰せます。
| チェック項目 | YESの目安 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| ① 反り/平面度の許容値が決まっている | 嵌合・端子位置で許容が明確 | “平面度が支配”なら低反り設計を最優先で候補化 |
| ② 流動方向を設計できる(ゲート自由度) | ゲート位置/多点の自由度あり | LCPは配向が強い。材料だけでなくゲート/肉厚/リブで潰す |
| ③ バリ対策(型精度/型合わせ)ができる | 微細部で型が勝てる設計 | 高流動ほどバリが出やすい。型精度/型締め/射出圧の上限も要件化 |
| ④ ウェルド・応力の対策がある | 割れのリスク部位が把握できている | 強ウェルド系や形状(角R/応力分散)もセットで |
結論: LCPは「材料+配向設計(ゲート/流動)」がセット。ここを固めると量産が一気に安定します。
LCP樹脂ペレット|主要メーカー(公式リンク)
※撤退・統合などで情報が古くなると比較が崩れるため、公式リンク起点でたどれる構成にしています(順不同)。
Celanese(Vectra® / Zenite®|LCP)
LCP 薄肉 電装 リフロー グローバル
Vectra® / Zenite® は、薄肉電装や精密部品の比較軸になりやすい代表シリーズです。
まずは「超高流動(薄肉)」「低反り」「強化(GF/ミネラル)」「規格(難燃/電気)」のどれを優先するかを決め、同カテゴリで横並び比較すると選定が速くなります。
ポリプラスチックス株式会社(LAPEROS®|LCP)
LCP 薄肉 高流動 精密 国内基準
LAPEROS® は、薄肉・高流動と精密用途を軸に、グレード探索が進めやすいシリーズです。
コネクタ用途では「最小肉厚」「平面度」「バリ許容」を先に固定して比較すると、手戻りが減ります。
住友化学株式会社(SUMIKASUPER™|LCP)
LCP 高耐熱 超高流動 電装 薄肉
SUMIKASUPER™ は、薄肉用途や耐熱要求が強い領域で候補に上がりやすいLCPシリーズです。
「リフロー耐熱」か「長期耐熱」かを分けて要件化すると、グレード選定が速くなります。
液晶ポリマー(LCP樹脂) ザイダー(Xydar®)|国内:ENEOSサンエナジー
LCP 低反り 高剛性 コネクタ 国内サイト
Xydar® はコネクタ・精密用途で、低反り/高剛性/強ウェルドなど“設計の癖”に刺さるカテゴリを作りやすいのが特長です。
平面度やウェルド割れが課題なら、最初から比較候補に入れると試作が速くなります。
東レ株式会社(SIVERAS™|LCP)
LCP 国内 電装 精密 BCP
SIVERAS™ は国内メーカーのLCPとして、用途要件に合わせて比較検討しやすいシリーズです。
国内調達・BCP観点で選択肢を持ちたい場合、ベンチマークに置きやすい候補です。
上野製薬株式会社(UENO LCP®)
LCP 国内 高流動 耐熱 高強度
UENO LCP® は高流動・耐熱・高強度など、用途別にタイプを作りやすいLCP材料です。
「薄肉を通したい」「平面度を守りたい」など要件を先に固定して相談すると、候補化が進みやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. LCPで一番多い失敗は?
多いのは反り(異方性/配向)と割れ(ウェルド/応力、層状割れ)です。
LCPは低吸水で寸法が強い反面、流動方向で物性と収縮が変わりやすいため、ゲート/流動設計まで含めて比較すると手戻りが減ります。
Q2. LCPは乾燥が不要って本当?
LCPは吸水が小さく、他樹脂ほど“吸水起因の寸法変動”は起きにくい一方で、材料保管・再生材・環境によっては外観や成形安定に影響することがあります。
現場では「乾燥条件を固定して比較」した方が、評価がブレにくくなります(結局、手戻りが減ります)。
Q3. PPS/PPAからLCPへ切り替える判断基準は?
目安は最小肉厚(流動)とリフロー温度、そして平面度(反り許容)です。
PPS/PPAで薄肉が流れない・端子位置が出ない・リフロー後に反るなどが出たら、LCPの比較価値が上がります。
関連ページ(あわせて読む)
なぜLCPなのか?|「PPS/PPAでは詰む条件」を一気に越える理由
薄肉 SMT/リフロー 高流動 低吸水 難燃 精密
LCPが選ばれる理由はシンプルで、「最小肉厚 × リフロー耐熱 × 平面度(反り)」の同時要求が来たとき、PPS/PPAの延長線では成立しにくい領域を一気に越えられるからです。
特にSMTコネクタ・高密度小型化・端子位置精度が厳しい電装では、LCPの優位性がはっきり出ます。
| LCPを選ぶ典型トリガー | 現場で起きがちな問題(PPS/PPA) | LCPが刺さる理由 | 実務の注意点 |
|---|---|---|---|
|
① 最小肉厚が0.3mm以下 (0.1〜0.2mm級) |
流れない、ショートショット、端子保持部が未充填 | 超高流動で極薄肉でも充填しやすい。高密度コネクタで実績多数 | 流れるほどバリ/ガス焼けも出やすい。型精度とベント設計が必須 |
| ② 鉛フリーリフロー(高温ピーク) | リフロー後に反り、端子位置ズレ、熱変形 | 高耐熱+低吸水で、リフロー後も寸法が安定しやすい | 「短期ピーク」か「長期連続温度」かを分けて要件化 |
| ③ 端子位置・平面度がシビア | PPS/PPAで反り・ねじれが出る | 低吸水で寸法安定。低反り設計グレードも選べる | 配向(異方性)が支配的。ゲート/流動方向で結果が変わる |
| ④ 小型化で剛性も欲しい | 薄肉で剛性不足、端子保持力が足りない | GF強化などで薄肉でも高剛性設計が可能 | GFは反りを助長する方向も。低反り設計とセットで検討 |
| ⑤ 難燃・電気特性が必須 | 薄肉で規格が通らない、温度上昇で不安 | 電装向け材料として難燃実績が豊富 | 規格は厚み条件を必ず固定して比較 |
結論: 「最小肉厚」「リフロー耐熱」「平面度(反り)」のうち2つ以上が同時に厳しいなら、LCPは“検討コストに見合う”確率が高い材料です。
ただしLCPの落とし穴は異方性(配向)とウェルド割れなので、材料だけでなくゲート設計・型精度・応力集中対策まで含めて比較すると、試作が一気に速くなります。